INNER LIFESTYLE DESIGN
 〜ナチュラルに生きる方法論序説
山澤清さんに会いに行った話
山澤清さんに会いに行った話


本年6月くらいに、こんな記事を読んだ。

「金がないなら稼げ」元ヒモのマッドサイエンティスト農家が語る人類改造計画
http://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/entry/dango07

この記事おもしろい。
「元ヒモのマッドサイエンティスト農家」とは、どんな人だ? と思うでしょう。
読んでみると、なんとも魅力的な人物で、底が抜けたバケツのように深い。
隙だらけのように見えて、やっていることは大変理にかなっているように思われる。

ブログをFBでシェアして、この人、一度会いに行ってみたい、と思った。
この人のすごいところは、自分の原理で動いていること。
それも頭で考えた原理ではなくて、生き方が根っから違う生物みたい。
世の中の原理とは大きくズレているはずなのに、生命力が強過ぎて、押さえ込まれることがない。
自由自在に生きているように見える。

坂口恭平さんにも、同じ印象を持つが、こちらは、何か悩みとか、相談とか、用事とかないと、漠然と会いにいくのはややためらわれる。

Facebookで「会ってみたいなー」と書くと、仙台の鈴木琴似さんから、やはり「会ってみたいですね」とコメントがついた。
では、会いに行こうか、となりました。
ただ、それだけのことから会いに行ったのです。
するべきことをする、義務を果たすより、こういう思いつきを実行に移すのは快感です。
自分の世界が広がります。

立派な人でも、隙のない人であれば、いきなり会いにはいけない。
多忙な人に、「何しにきた?」と言われると困りますからね。
記事から漂う空気感は、そういうものがない。
そこも魅力だったのです。

自分で作った野菜のレストランをしているので、そこで食事をして、少しお話をうかがえますか? とメールしたら、スタッフの方からのメールで快諾をいただきました。
そんなことで8月14日に仙台からKさんのクルマに乗せていただいて、鶴岡のレストランを訪ね、会見が実現したのです。

僕に執筆の時間がないので、さらなる道中のいきさつなどは省きます。

ただ少しだけ。
レストランの料理は、肉魚使わず、調味料最低限。それで滋味豊かで、ゆっくり味わいたくなる満足のいくものでした。
レストランには、多種多様な作物を育てている巨大なビニールハウスを通ります。お話はそこの一角に座ってお聞きしました。
ここには、ひっきりなしに来客があります。
山澤さんは、わけへだてなく、いろいろな人と話し込んでいます。

山澤さんの話は、水量の多い河の流れのようで、とどまることがありません。
話と話の合間にわずかに質問などをはさむこともできますが、質問しなくても話は途切れません。
今回は商業媒体に発表するなどの目的のあるインタビューではないので、ほとんど質問ははさまず聞く一方でした。
それでも2時間止まりませんでした。
こちらの都合で退去したので、それがなければ、もしかすると、さらに数時間続いたかもしれません。

深い意図もなしに、気楽に会いに行きましたが、お世話になった琴似さんはじめ、数人の友人にレポートを促されました。
稀有な人物にせっかく会ったので、ブログ記事に書くことにしました。社会的にも意味あることと思います。

録音はもとよりメモも取っていませんので、記憶、印象での再生となります。
精度の保証はないということですが、インタビューは仕事でしていたので、さほどひどくはないでしょう。
ただ独特の早口の口調は、再現できません。適当な口語になります。

—————————山澤さんとの会見要旨------------------------------
▶︎話の順番は覚えてない。適当なところから始める。

●心は赤ちゃん ハルシオンと酒

「俺は身体は年寄りだけど、心は赤ちゃんなんだよ。いつも何しようかって考えてる。24時間暇で暇で」

24時間といっても寝る時間があるでしょう (by 琴似さん

「俺寝たくないないんだよ。ほっとくといつまでも目がぱっちり開いて起きているの。仕方ないから、ハルシオンを酒で飲んでシャットダウンするの」

それめちゃくちゃ身体に悪いですよ!

「平気だよ。もう20年もそうやっている」


▶︎身体は老人というが、そうは見えない。70歳くらいなのに、たくましい40代くらいに見える。お肌つやつや。これも原種の野菜パワーのおかげだろうか。「身体にいいことは何もしていない」というが、両足に2キロの重りをつけていると冒頭の記事にある。
山澤さんの「何もしていない」はどういうレベルかわからない(ちなみにこの日はつけていなかったから、やめたのかもしれない)。
「24時間暇で暇で」というのも、文字どおりに受け取ることはできない。たしかに僕らに話をしてくれたことを含めて、4時間ほどの滞在中、見ている限り、ずっと接客をしていた。
それも仕事といえば仕事で、きっと他の仕事も「暇だから」すごい集中力でしているに違いない。
酒とハルシオンは、よいこのみなさんは決して真似してはいけない。ハルシオンだけでもいけない。山澤さんはたぶん肉体も特殊であると思う。

琴似さんはハルシオンに酒は、「嘘でしょう」と真に受けていなかったが、僕はありうると思う。
身体ごと原理が違う。
太陽の中で核融合が起きているように、この人の中では夾雑物のない創造性がつねに爆発していて、それが超人的なエネルギーを生んでいる。そういう印象を受けた。

身体に悪い話をさらにしよう。

「俺は1日60本タバコを吸うの。2年前から始めた。俺の仕事は嗅覚が大事だ。指先にタバコの匂いがつくとそれが鈍る。でも、いいやと吸うことにしたの。60本のノルマ吸いきれなくて、夜中に3本いっぺんに吸うこともある。……俺は人との約束はどうでもいいが、自分との約束は守るの。60本吸うと決めたら吸う」

▶︎どうやらいわゆる禁煙ファシズム的なこと、世の中が一つの方向に傾いてしまうことに頭に来て始めたらしい。
だからといって60本吸わなくてもいいと思うが。

「副流煙がどうの、という人がいるが、お前が食ってるポテトチップスのほうがよほど身体に悪いってぇの。ようするに今をとるか、100年後をとるか、2つに1つなんだ。今をよくしようとするのにみんな頑張ると、100年後のことは誰も考えなくなる」

▶︎100年後とは、野菜の品種の改悪と食べ物の劣化が子どもたちに与える影響のことを主に言っている。嫌煙権で自分のいまの健康をうるさく気遣うくせに、未来のこと、全体のことを少しも想像しない精神に対して憤っている。今か未来か。両方ではなぜダメかはわからなかった。
聞けばロジックがあったと思うけれども。

「だから俺はタバコを吸うことにして、ピアスの穴も開けたの」


▶︎金の丸いピアスは、白金台のマダムからのプレゼントだという。イエローダイヤがどうしたとかで、数十万円するという。
ピアスも、「今なんかどうでもいい」という表現なのだ(たぶん)。
にしきのあきらから壷をもらった、とも言っていた。
全国にファンがいるのだろう。
レストランを開くに当たって、投資家を募ったときも、東京に説明会に行って必要資金のうち800万円(だったと思う)を調達した。資金のごく一部だ。
投資家は億の単位で出したがったが、「農業やるのにそんな金いらない」と断った。
結局カネでしばられることになるからだ。


●自立している
「俺の会社は35年やっているけど、ほとんど横這い。ほんの少しずつ右肩上がりで、つぶれもせずに続いている。こんな会社ないよ。野菜食べれば生きていけるから、何が起きても困らない。どんな政府になってもいいんだ。なんならイスラムの政権でもいい。だから、俺、選挙権いらないんだ。いらないから返します、と返還にいったら、それは困ります、と断られた」

▶︎選挙で棄権する人は多いが、権利を返還しようとする人はいないだろう。
なんとも過剰で、山澤さんらしい。
さきほど「人との約束はどうでもいい」と書いたが、山澤さんは何より束縛を嫌う。たぶん「他人との約束は破ってもいい」ではなく、約束めいた関係はできる限り作らないで生きている。
大きな利益を生むような構造は、できても作り出さない。
およそ事業家で億単位の融資に心を動かさない人間はいないだろう。
でも山澤さんは違う。
それではカネの動きのほうがメインになってしまうからだ。
そして野菜という食べ物があれば、カネにはほとんど依存しなくていい。
そういう安定と自立を確保して生きている。
それは上手に商売をして荒稼ぎをしているより、ずっと自然で賢く見える。

*フォトリーディングと料理

「化粧品の免許を取るには、こんなに(両手を40〜50センチくらい広げて)資料を読まないといけない。俺は写真を撮るみたいに記憶できるんだ(フォトリーディングができるらしい)。それでも1年半かかった」

「資格は他も調理師免許の他、いくつももっている。(なんかニッチな資格をいろいろ言っていたが村松が忘れた)。普通の人は職業の足しにするんだろうが、俺はほとんど使わない。持っていても役に立たないと証明するために持ってる」

「俺はもともと料理人だが、レストランのスタッフに料理は教えないよ。料理は理を料る(はかる)と書く。どの野菜をどれくらい加熱したらうまいか、それを調べることは教える。
原種の野菜は、アクが強かったり、癖がある。そして収量も少ない。それをおいしく食べるには、どれくらい加熱したらおいしいか、一つ一つ調べないといけない。あとは全部任せている」

▶︎山澤さんは、600種類の野菜の原種を集めて育てている。原種は作物からタネがとれる。そのタネから野菜を育てることができる。しかし、いまはタネができないように品種改良された種類の野菜が農業の主流だ。農家は毎年タネを買ってこなければ仕事ができない。
モンサントのような企業が野菜のタネをパテントのように権利化しようとしている大きな流れの中にある。
原種を集めるのはたいへんだったのでは? と聞くと「いや簡単だったよ」という。

早口で説明されたが、村松の聞き取りと解釈が正しければ、次のようである。
原種のタネは、全国のタネ屋に普通にある。
ただ売れないから主流ではないし、ほうっておけば滅びる。
要するに原種はまだ十分にあるけれども、散逸して存在していて滅びる運命にある。
それを山澤さんは、一人で集めて育て、データを集積している。

どこにいけば何のタネがある、というリストを見せてくれた。
これを作るのが常人にとって簡単なことだったとも思えないが、山澤さんの集中力の前には何事でもなかったらしい。

「このリストをもう少し整えたら無料で公開しようと思ってる」

彼をフォローする農家は全国に800人ほどいるらしい。その800人と具体的にどういう関係かは聞けなかった。とにかく彼の話は水量が多く、どんどん流れていってしまう。
しかし、無料で情報を流しているようだ。
そのあとに次のようなやりとりが続く。

「権力ってなんだと思う?」 
珍しく彼のほうから琴似さんに質問した。

「権力ってのは、情報を流さないことによって、自分の優位性を確保することなんだよ。それ以外にないんだ。俺はそのことを植物(生物)から学んだよ」

この権力論は、シンプルで斬新で魅力的だ。
情報だけではなく、カネやエネルギー、そしてタネ。
独占することによって支配しようとする力が権力。
生物から学んだという部分が気になるが、話はどんどん流れていく。

彼自身は惜しげも無く自分の情報を公開しているようだ。
ノウハウや情報をカネに変える気はない。

タネを独占して巨利を得ようとするモンサントのような会社に対して、考えたことかもしれない。

*悩み買います

「俺には悩みというものがないんだよ。悩んでみたい。どうやったら悩めるのか、知りたいんだ。だから、悩み買います、って言っているんだ。悩んでいる人が売ってくれればいいんだけど、『じゃあ、その悩みいくら?』って聞いても値段がつかないんだよ。いざ売ろうとすると、値打ちがないんだ。買ってみたいよ」

*息止めて死ぬ

「あんまり悩みがないから、俺、ときどき息止めて死んでみようかと思うんだ」

と山澤さんは何度か言った。
なんで悩みがなくて死ぬの? と思う人が世の中の大部分ではないかと思うので解説する。

三島由紀夫風にいうと、『生の充溢のあまりの虚無』ということではないかと思う。
事業は順調。
心身は極めて健康で創造力と生命力が溢れている。
悩みはない。

最初に書いたように、太陽の核融合のように生命力が完全燃焼しているとすると。
それは地球に大きな恩恵をもたらす。
しかし、太陽自体には人は住めない。
そして太陽自体が100億年の寿命に倦んでしまうことがあるかもしれない。

だから、酒とハルシオンで強制終了しないと1日が終わらないように、自分の寿命も強制終了しないと終わらない。そう感じているのではないか。
それくらい強い生命力だということだ。

ちなみに自分で息をとめて死ぬことは、常人にはできない。
昔、ミステリ雑誌で「自分で自分の首を絞めて死ぬことができるか?」という記事があった。
「もしも自分の手で紐を使って本気で首を絞めるなら、どこかで気を失って力が抜けてしまう。
ただ紐に摩擦の力が残って首を絞め続けるなら絶命するかもしれない」という論旨であった。

首を絞めてもダメなのだから、自分で息を止めて死ねるものではない。
そんなことができたら、やはり超人という他ない。

*料理チェックの現場にでくわす

帰る頃になって、運のいいことにレストランの女性スタッフが数種類の野菜のエキス、スープを山澤さんに味見してもらおうと持ってきた。このような飲み物を我々もいただいたが、本当においしかった。
野菜だけなのだが、シンプルというより複雑精妙な味がする。

山澤さんは、一口飲んで納得していない顔をした。
「これいくつもの野菜を使っているな。一つ一つ別々に作って混ぜてみな」
たぶん山澤さんの感官は人よりすぐれているはずだ。
タバコを吸い始めても、なお。

山澤さんには、科学者的な実証的・実験精神があるようだ。
一つ一つの野菜が最適な温度で調理されていることの確認。
そのようにして抽出したエキスをどの割合で混ぜたら、いちばんよい味になるのか、いくつも実験してみることだ、と言っているように見えた。

いくつもの配合を作り、メモし、その中からベストのものを選ばなければならない。

それは単純に感覚に頼るより、はるかに手間がかかることだろう。
スタッフの帰り際に、

「いや、これは一般受けするよ。北海道の人間にはこれで十分だろう。でも一般受けするけれども、すぐ飽きられる」

北海道というのは、このスタッフが数年後に北海道でレストランを開く修行中だからだ。
山澤さんは、軽い毒舌を吐いたわけだが、スタッフは慣れているのかけろっとしている。
だいたい味見にサンプルを持ってきたのも、オーナーの承諾を得るためというより、純粋な基準を持つ山澤さんがなんというか、ぶつけてみようと、参考のために試しに来たという風情であった。

▶︎以上、駆け足でのレポートを終わる。
2時間ほどの会見だけをベースに書いているので、解釈について想像力で補った部分がたくさんある。
僕にとって想像力で把握したものは、目でみたもの、耳で聞いたものとさほど違いがない。
もちろん不正確な部分もあるだろう。
そういうものとして読んでほしい。

総じて、注目すべき人物の存在とその発想をさらに広く知らしめたいという善意に基づいて、見たまま感じたままを正直に書いたことだけは間違いない。






追記*

おそるおそるブログに書いたことをご本人にお知らせしたところ、いつも対応してくださるスタッフの方からご返信をいただきました。
ご紹介します。

村松恒平様

メールをありがとうございます。
早速拝見いたしました。
山澤所長が「おれよりおれのこと知ってんじゃないか!」と大変感心いたしまして、
村松様の思ったこと、思ったようにおっしゃっていただいてまったくもって結構なことだ!
と申しておりました。
また機会がございましたら遊びにいらしてください。
どうぞお元気でお過ごしください。
取り急ぎお礼まで


ハーブ研究所スパール
ベジタイムレストラン「土遊農」
       山澤 清
       代 佐藤












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