2009.12.25 Friday 14:18
知識の身体化について書いていて、一つ、あ、そうか、と気づいたことがあります。
西洋の哲学は、身体の外に構築されているのです。
論理的にがっちり組まれて外化されているから、共有したり批判したりできます。
しかし、日本人の論理は一見似たように見えても、身体化されているから、内部とつながっているのです。共有物というより、その人個人のものなのです。
したがって、相互批判によって、より真理に近づいていくなどということは、ほとんど起きないのです。
ネットでは、ある人の意見を攻撃するときに、人格まで攻撃するでしょう。
また批判される側になっても、冷静に論理的に反論できる人は少数で、やはり人格そのものを傷つけられたように感情的になってしまいます。
それは訓練や考え方の問題というより日本人の論理構造自体に根深くあったのだ、と昨日気づきました。
そう考えるとたいへん面白いことが見えてきます。
これは道具の使用についてはよく言われることです。
西洋では、アーチェリーのように道具を誰にでも精度高く当たるように、どんどん洗練進化させて行きました。
それに対して、日本の弓道は道具よりも弓道という道によって、内的なものを洗練、蓄積し開発したのです。
もちろん、日本の弓にも良し悪し、工夫はあると思いますが、基本精神は「弘法は筆を選ばず」という部分にあるのです。
日本人は弓矢という道具を通じて内面を開発するのです。
西洋の概念と日本の概念を比べるとき、いつも考えるのが、「自由」と「勝手」の違いです。
高校の体育の先生が「『自由』と『勝手』をはき違えてはいけない」と何かのときにお説教したのを覚えているのですが、なんとなく、自由は高級で、勝手は悪いことというイメージが一般にあると思うのです。
しかし、100人の日本人に「自由とは何か」と定義を書かせたとしたら、全部バラバラで定義にならないと思うのです。
ということは、日本人は福沢諭吉以来の文明開化で、いまだに自由がなんだかわかっていない、とも言えます。
定義というものをそもそも日本人は重んじません。
そういうものは堅苦しくてややこしい。
暗黙のうちにわかっていることを交換するのをよしとするのです。
その点、「勝手」という言葉はもともと定義の枠にはまりにくいものです。
いちばんよく使われるのは、「自分勝手」という言葉なので、悪い意味にとられます。
しかし、「勝手口」、「勝手を知っている」、「使い勝手がいい」などの用法では、非常に小回りが利き、機能的な感じがします。
たとえば、自分の部屋に気の置けない友人たちが来たとき、自分が席を外さなくてはいけなくなったという場合、「自由にやっててくれ」よりも、「勝手にやっててくれ」のほうが、ずっと人同士の輪郭がはっきりしてぴったりくる言葉だと感じます。
勝手は、身一つが機敏に動くというイメージがあるでしょう。
自由は、漠然とした許された領域であったり、態度であったり、多様なものが含まれます。
英語でいうと、freeとliberty という違う言葉が、自由という一つの言葉に訳されるのです。
西洋から輸入されて、いつまでも身体化されない言葉というのは、共有される輪郭がぶよぶよしています。そういうのは、やはり日常でモノを考える道具としては、改めて定義しない限り、疑わしいものです。
自由の定義を考えるとあれこれ切りがないけれども、勝手という言葉はどうこねくり回しても体系化されたりしないのです。
勝手は勝手でしかない。
そういう潔さが言葉として使い勝手がいいのです。
しかし、哲学とか体系には容易に発展しそうにありません。
「人が自由に生きられる社会とは?」というのは考えられても、「人が勝手に生きられる社会とは?」というふうには考えません。
勝手に生きるのは社会ではなく「世間」ではないか? というようなことも考えられて、言葉を一つ変えただけで、全然違うモードに入ってしまいます。
(私はときどきこのように言葉をひねくり回して遊びながらいろいろなことを検証しています(笑))
このように知識の身体化ということを考えますと、いろいろ考えるべき隙間が見えてきますね。
なぜ日本で論争が不毛なのかということがわかってしまいましたし。
日本ではまず論争の仕方やとらえ方を変えないといけないですね。
有益な話をするには、論争にも作法というものが必要な気がします。
そして、教育、これはもう身体化ということをベースに考えると根底からひっくり返ってしまうでしょう。
身体的な教育の各論に立ち入りませんが、個性尊重だ、ゆとりだ、という本質とズレた部分をいじる前に考えるべきことなのは間違いありません。
国の政策は容易に変わりませんが、小さなお子さんを持つご両親は、家庭での教育について、身体的な教育というのは、具体的にいかなることであろうか、と思いめぐらしてください。
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アッチ→